複合座標参照系(Compound CRS)
2025年12月11日 18:40
GISBoxは、OSGB/GEOTIFF/RVTなどの複数のGISフォーマットでの編集をサポートし、3DTiles/Terrainへの変換や公開が可能なワンストップ3DGIS データ編集、変換、公開プラットフォームです。
概要
複合座標参照系(Compound CRS)は、複数の座標参照系(CRS)を組み合わせることで、多次元の空間データを統一的に表現するための仕組みです。例えば、平面座標系(例:EPSG:7661)と標高系(例:EPSG:3855)を統合し、「平面+標高」という完全な空間記述を構成します。その本質は、水平座標系と垂直座標系が使用するパラメータ(楕円体や測地基準など)を整合させることで、一貫性のある空間表現を実現する点にあります。技術的には、複合 CRS は一般に水平 CRS と垂直 CRS から構成され、入れ子構造やパラメータ連携によって統合されます。
構成要素
- グローバル座標系:空間内での構成要素の位置と向きを決定する幾何学モデルであり、通常は CAD モデルのインポート時に用いる座標系と一致させる。
- プリ座標系:積層材の0度方向を規定するための局所座標系で、ラミネート層の繊維方向を定義する。
- 材料座標系:材料特性と連動し、構成則や繊維配向を記述するための座標系。
- 断面座標系:特定の断面解析に用いられる局所座標系で、構造力学における応力・ひずみ計算に利用される。
長所
- 多次元データの統合的表現:水平(平面)と垂直(標高)の CRS を組み合わせることで、地形モデルや洪水解析などの複雑な空間シナリオに対応できる総合的な空間記述が可能となる。
- 材料挙動の高精度シミュレーション:複合材料解析において、グローバル座標系やプリ座標系などを使い分けることで、異方性材料の特性や方向性を精密に定義でき、解析精度が向上する。
- 高い柔軟性:作業物の座標更新に伴う経路自動同期や外部軸の動作補正などに対応し、搬送ガイドやロボット制御などにおいて高い適応性を示す。
短所
- 高い複雑性:楕円体や測地基準など、各サブシステムのパラメータ設定が厳密に求められるため、モデリングが複雑化し計算コストも増大する。
- 経済的負担:複合材料の高い原材料費や加工コストが解析の負担をさらに大きくする。
- 互換性の課題:局所座標系(パラメトリック座標系など)と地心座標系(GPS など)との変換が複雑で、データ統合の精度に影響を及ぼす可能性がある。
応用シーン
複合 CRS は、水平座標系と垂直座標系を統合することで多次元空間データを一体的に表現し、地形モデル、洪水シミュレーション、3D GIS 解析などに広く利用されている。工学分野では、積層材の破壊モード解析など、異方性材料の挙動を高精度に再現するために不可欠であり、外部軸制御や搬送ガイドのような動的調整が必要な応用にも適している。研究分野では、スマートシティの地図データ融合、交通流の最適化、物体運動の記述(物理シミュレーションやコンピュータグラフィックス)などで重要な役割を担う。多次元の空間情報を統合できる点が大きな強みである一方、パラメータ構造の複雑性や高い計算コストには注意が必要となる。
例
1. WGS84(G1150) EPSG:7661。

2. 南極大陸-ペネル海岸地域 EPSG:3855。

関連座標系
UTM ゾーン
東京測地系
メルカトル図法
ロビンソン図法
参考
- https://docs.geotools.org/latest/javadocs/org/geotools/api/referencing/crs/CompoundCRS.html
- https://epsg.io/?q=crs%20kind%3ACOMPOUNDCRS
- https://www.crs-geo.eu/definition-crs.htm