タイムズ図法(Times projection)
2025年10月29日 17:30
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概要
タイムズ図法(Times projection) は、1965年にイギリスの地図製作会社 Bartholomew Ltd. のために ジョン・モイア(John Moir) によって開発された擬円筒図法の一種です。ガル図法の立体投影版(Gall stereographic projection)を修正したもので、経線を直線ではなく曲線として表現する点に特徴があります。
構成要素
1. 経線と緯線の特徴
- 赤道と中央経線は直線として投影されます。
- その他の経線は等間隔の正弦曲線として描かれます。
- 緯線および両極はすべて直線です。
2. 歪みの特徴
- タイムズ図法は正角図法でも等積図法でもなく、形状・面積・距離・方向・角度のいずれにも歪みが存在します。
- 北緯および南緯45°の標準緯線上では正しい縮尺で表示されます。
- 標準緯線から離れるほど歪みが増加し、特に極地では最も顕著になります。
- 歪みは赤道および中央経線を中心に対称的に分布します。
長所
- 優れた視覚的バランス:タイムズ図法は経線が曲線で描かれるため、中緯度地域の表示において視覚的なバランスが取れており、極端な歪みを避けることができます。地理情報の伝達と美観の両立を求める地図作成に適しています。
- 中緯度での歪みが少ない:標準緯線(北緯・南緯45°)付近では形状・縮尺の歪みが最小限に抑えられ、中緯度地域の地理的特徴を比較的正確に再現します。温帯や亜熱帯のように人口密度や経済活動が高い地域を表現する地図に適しています。
- 作成が比較的容易:擬円筒図法であるため、計算や描画が比較的簡単で、複雑な数学モデルや高精度計算を必要としません。そのため、地図制作のコストや技術的ハードルが低く抑えられます。
- 高い互換性:タイムズ図法は ArcGIS Pro(1.0以降) や ArcGIS Desktop(8.1.1以降) など、多くの地理情報システム(GIS)ソフトウェアに対応しており、デジタル地図制作への導入が容易です。
短所
- 極地での歪みが著しい:極地付近では形状・面積・距離・方向すべてに大きな歪みが生じ、地理的特徴を正確に表現できません。そのため、極地探査や高精度の科学研究には不向きです。
- 緯度が高くなるほど面積歪みが増加:面積の歪みは標準緯線から極地に向かうにつれて大きくなり、高緯度地域では過大または過小に表現される傾向があります。これにより、地理的空間関係の理解を誤る可能性があり、資源分配や生態保全計画など、正確な面積が必要な用途には適していません。
- 方向精度の制限:タイムズ図法では、特に標準緯線から離れた地域で方向の表現が正確ではなく、航行や経路計画など方向依存の用途には不向きです。
- 球体モデルのみ対応:この図法は球体モデルを前提として設計されており、地球のような楕円体モデルに適用する場合は、長半径と短半径の平均値を用いて近似します。そのため、若干の精度低下が生じる可能性があります。
- 高精度用途には不適:図法特性上の歪みにより、土地測量、土木計画、軍事作戦など、高精度な地理情報を必要とする用途には適していません。
応用シーン
タイムズ図法は、正確な面積計測を必要とせず、主に視覚的表現を目的とする一般的な世界地図に適しています。特に中緯度地域の表示に優れていますが、極地や高精度な地理解析を行う場面では使用を避けるべきです。
例
1. グリニッジを中心にしたタイムズ図法の投影例。

関連座標系
MGRS
Swiss LV95(スイス・エルブイ95)
アイリッシュ横メルカトル
GPS座標系
参考
- https://epsg.io/map#srs=5514&x=-543698.817778&y=-1140877.554892&z=7&layer=streets
- https://gis.stackexchange.com/questions/358536/coordinate-drift-when-using-osm2pgsql-and-specifying-epsg-code