パターソン図法(Patterson Projection)
2025年10月30日 19:05
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概要
パターソン図法(Patterson Projection)は、結晶学において原子間ベクトルの分布を解析するために用いられる数学的手法です。X線回折実験から得られる強度データをもとに、原子の相対的な位置関係を示す「パターソン関数」を計算し、結晶構造を解明する際の補助手段として利用されます。この手法は、特に未知の構造解析において、直接位相決定が困難な場合に役立ち、重原子法や分子置換法などと併用されることが多いです。
オーバービュー
パターソン図法に関連するデータは、主に以下の形式で扱われます:
- X線回折データ(.HKL 形式など):反射指数(h, k, l)および強度情報を含むファイル。パターソン関数の計算に利用されます。
- 構造因子データ(.FCF 形式など):観測または計算された構造因子を格納し、Patterson マップ作成の入力として用いられます。
- 電子密度マップ(.MAP, .CCP4 形式など):計算されたパターソン関数の結果を格納し、可視化ソフトで原子間ベクトルの分布を確認できます。
- 結晶構造ファイル(.CIF 形式など):最終的に決定された結晶構造と比較・検証するために使用されます。
長所
- 位相問題の補助:直接法で位相決定が難しい場合でも、原子間ベクトル情報を通じて構造推定の手がかりを得られます。
- 重原子の位置特定:重原子の位置を高精度に見つけることができ、その後の構造解析に役立ちます。
- 計算の安定性:強度データから直接算出するため、比較的ロバストな解析が可能です。
- 併用性:分子置換法や異常分散法と併せて利用することで、解析の成功率が高まります。
短所
- 解釈の難しさ:パターソンマップは原子そのものではなく原子間ベクトルを示すため、直接的に構造を読み取るのは困難です。
- 複雑化:分子が大きくなると、ベクトルの組み合わせが膨大となり、マップが複雑化して判読が難しくなります。
- 限定的な利用:位相決定や部分構造推定の補助手段に留まることが多く、単独で完全な構造決定には至りません。
- データ品質依存:強度データの精度が低い場合、ノイズが増加し信頼性が低下します。
応用シーン
パターソン図法は、主に結晶構造解析の初期段階で用いられます。特に、重原子の位置決定や部分構造の推定に適しており、新規物質の構造研究や薬物分子の結晶解析に利用されます。また、タンパク質結晶学においても、分子置換法と組み合わせることで未知タンパク質の構造モデル作成に役立ちます。さらに、無機材料、金属錯体、有機分子の結晶解析など、幅広い分野で活用され、物質科学や生命科学における研究基盤技術の一つとなっています。
例
- グリニッジを中心にしたパターソン円筒図法による地図投影を示します。

2. パターソン図法の気候図。

関連 GIS 投影
ハマー投影法
ホティン斜軸メルカトル図法
航程方位図法
ガル正距円筒図法
参考
- https://desktop.arcgis.com/ja/arcmap/latest/map/projections/patterson.htm
- https://map-projections.net/patterson.php
- https://map-projections.net/license/patterson-political-v2:fig