BAG (Bathymetric Attributed Grid)
2025年12月05日 16:16

GISBoxは、OSGB/GEOTIFF/RVTなどの複数のGISフォーマットでの編集をサポートし、3DTiles/Terrainへの変換や公開が可能なワンストップ3DGIS データ編集、変換、公開プラットフォームです。

概要

BAG(Bathymetric Attributed Grid)は、海洋測量および海底地形モデル化のために使用されるオープンかつ標準化されたデータ形式であり、Open Navigation Surface Working Group によって開発・維持されています。HDF5コンテナを利用してデータを構造化しており、海底深度値を格納する「水深グリッド(Elevation Layer)」と、深度計測誤差を記録する「不確実性レイヤ(Uncertainty Layer)」を中核要素として持つほか、座標参照系や取得機器パラメータなどのメタデータ、さらに測点密度や海底分類などのオプションレイヤもサポートします。また、大規模な海底地形データの保存・伝送効率を最適化するためにタイルベース圧縮技術を採用し、多解像度ピラミッド構造にも対応しています。国際水路機関(IHO)が推奨する海底地形データ交換標準の一つです。

データフォーマットの概要

BAG は HDF5 コンテナを用いた階層構造を採用しています。

1. コアデータレイヤ

  • Elevation Layer:海底深度グリッドデータを格納
  • Uncertainty Layer:各深度値に対する誤差範囲を記録

2. メタデータセクション

  • 座標参照系の定義(例:WGS84)
  • データ範囲、解像度、取得情報
  • フォーマットバージョンなどのグローバル属性

3. オプション拡張レイヤ

  • 測点密度分布
  • 海底分類
  • データ品質フラグ

4. 最適化構造

  • タイル化ストレージ:大規模データをブロック分割し、圧縮と高速アクセスを実現
  • 多解像度ピラミッド:異なるズームレベルのデータを保持し、迅速な可視化を可能にする

長所

  1. 高い標準化とオープン性:IHO標準に準拠し、オープンなHDF5を基礎とするため、クロスプラットフォームでのデータ交換に優れる。
  2. 完全かつ信頼性の高いデータ構造:Elevation と Uncertainty の必須レイヤを備え、豊富なメタデータでデータ品質と追跡性を確保。
  3. 効率的な保存とアクセス:タイルベース圧縮により保存容量を削減し、多解像度ピラミッドにより高速閲覧やオンライン配信をサポート。
  4. 幅広い応用性:オプションレイヤにより拡張可能で、海洋測量、航行安全、科学研究、海洋工学など多様な用途に対応。
  5. 高いソフトウェア互換性:QGIS、ArcGIS などの主要GIS、Geoserver などのWeb地図サービスで広くサポート。

短所

  1. 高い技術的要求:HDF5 技術スタックに依存するため、専門知識がない利用者には扱いが難しく、専用ツールが必要。
  2. 構造の柔軟性が限定的:必須の「深度+不確実性」構造は単純用途には過剰で、ストリーミング配信も非対応。
  3. 処理性能の制約:非常に大規模なデータではピラミッド構築に時間がかかり、分散ストレージをサポートせず、単一ファイル処理がハードウェアに依存。
  4. 適用分野の制限:主に海洋測量向けであり、他の地理空間分野におけるエコシステムは比較的弱い。
  5. バージョン互換性の課題:バージョン間でメタデータ項目の差異があり、互換性問題が発生することがある。カスタム拡張には統一規格が存在しない。

応用シーン

BAG形式は、海洋測量、航行安全、海中工学の中核データキャリアとして利用され、主に高精度な海底地形モデル化・可視化、海図作成および障害物検出、海底パイプライン/ケーブル敷設のルート計画、海洋科学研究(例:海底地形の地形進化解析)、さらには沈没船や水中文化遺産の3D復元など、多様な海洋関連分野で重要な役割を果たしています。

1. BAG(Bathymetric Attributed Grid)フォーマットのアイコンおよびロゴ。

ファイルの開き方

1. Esri Ocean Basemap を使用した水深データの可視化。

関連 GIS ファイル

CIB

ADF

RPF

CADRG

参考

  1. https://en.wikipedia.org/wiki/Bathymetric_attributed_grid
  2. https://gdal.org/en/stable/drivers/raster/bag.html
  3. https://bag.readthedocs.io/en/master/fsd/index.html